当時、私のライバルは電話の受話器でした。コード付きの。
私の飼い主さんは、私が大きな声で鳴いても知らん顔なのに、電話機の音が鳴るとすぐ反応します。
そして、あのへんてこな形をした「受話器」と呼ばれるものに向かって一生懸命話をしています。
ときには大声で笑ったり。
何が楽しいのでしょうか?
私への接し方とは全然違います。本当にくやしいきもちになります。
私は飼い主さんが受話器に向かって話をしているときは、私も飼い主さんに話しかけます。受話器の声に負けないように大きな声で。
でも、近ごろは少し様子が変わりました。最近の受話器はコードがありません。「携帯電話」と言うそうです。
お話もしますが、指をしきりに動かして文字を書いているようです。どうやら「メール」
と言うそうです。
そんなものより、その指先で、私の頭をカキカキしてほしいのに……。
私はあるときすきを見て、にっくき携帯電話に攻撃をしかけました。
これで飼い主さんは私のほうに向いてくれると思ったからです。
でも、飼い主さんは私に対して冷たくなってしまいました。
私はただ、かまってほしかっただけなのに。
これが嫉妬というものでしょうか。
他にもライバルはいっぱいいます。
パソコンのキーボード。
どうして飼い主さんは夢中なのでしょうか。何が楽しいの?
鏡。
女性の場合、長時間鏡の前で自分の顔をなでくりまわしています。自分の顔を眺めてどうするんでしょう。それよりも私を見て!
電子レンジ。
チンという音で飼い主さんが行動を起こす。すごい機械です。
でも私の仲間はこの「チン」を真似をして、飼い主さん振り向かせていましたが。一枚上手ですね。
飼い主さんの気を引くライバルは他にもいっぱいあります。
メガネ。
ペン。
ヒゲそり。
テレビのリモコン。
車のカギ。
ぬいぐるみ。
私も最初はやきもきしていましたが、いちいち気にしていたら身が持ちません。にっくきライバルと思わず、電子レンジの「チン」を真似するくらいのユーモアを持って、飼い主さんと楽しみましょう。
でも、私たちがケージの外で遊んでいるときは、できればにっくきライバルたちは隠しておいてもらえるとありがたいですね。大切なものならなおさらです。
だって、その姿を見ると、スイッチが入ってどうしても八つ当たりしたくなっちゃいますから。