(10)コンパニオンバードの繁殖の未来「ここにいる鳥は、まだ幸せ!?」

いつもありがとうございます。鳥爺です。
私が視察したフィリピンの繁殖場は、住宅街の中にありました。
ただその建物の周囲は有刺鉄線で囲われています。この中には安易に入ることはできそうもない雰囲気です。

出入口のゲートで身分証明書(パスポート)などのチェックを受けた後、中に入らせてもらいました。驚きました。外から見たイメージは有刺鉄線で囲われていましたので、さぞかし中も物々しい雰囲気かと思いきや、南国独特の植物が生い茂り、宿泊用のロッジ風の建物がいくつも並び、まるで南国のリゾートといった感じです。鳥の鳴き声が聞こえなければ、繁殖場とは思えない空間でした。

この繁殖場の特徴は、鳥よりも人の数のほうが多く感じました。子供もいれば、抱っこされた赤ちゃんもいます。おじいちゃん、おばあちゃんもいます。もちろん鳥のほうが多いのですが、人間のほうが身体の大きいので、そう感じたのかもしれません。
どうしてこんなに人がいるのか最初理解できませんでした。家族経営かと思いましたがそうではないようです。実はいくつもあるロッジはそれぞれの家族の住宅です。ここでは家族単位で住み込みで働いているようです。

でも、こんなに人が多ければ経営者は人件費をどうするのかなと思いました。そのことを友人に尋ねました。すると
「ここで働いている人たちは、貧しい地方からやってきた人です」
「住む場所を与えるので、繁殖場の仕事をしてもらいます」
「なので報酬は驚くくらい安いよ」
と言われました。さらにこう付け加えました。
「ここにいる人は、まだ幸せ。生きるためにもっと大変な人はたくさんいる」
と悲しさと怒りを織り交ぜたような複雑な表情を、初めて見せました。

友人も故郷フィリピンで仕事がなくて、10数年まえに日本に出稼ぎに来ました。日本にくるために高額な仲介料を払ったそうです。最初の頃は高い仲介料を返すのに必死で、それが今終わってようやく故郷の家族に仕送りができるようになったと言っていました。

フィリピンの繁殖場で一通りの見学をしました。鳥の種類、様子、衛生状態など、正直あまり印象が残っていません。それよりも、繁殖場で働く乳飲児を抱っこしたお母さん、繁殖場内を走り回る男の子、ベンチで疲れたように座っているお爺ちゃんたちが気になってしまいました。その様子を見ながら
「ここにいる人は、まだ幸せ」という友人の言葉が私の耳の中をループします。
その裏にこの国が抱える貧困や差別の問題などが、私の頭と心の中を占有してしまったようです。

繁殖場を後にしました。住宅街を抜け繁華街やその裏をタクシーで走ると、信号待ちの度にタバコやガムなどを抱えた子供がやってきます。その光景を見て、また友人の言葉を思い出しました。
「ここにいる人は、まだ幸せ」
では、「まだ幸せ」な人たちがお世話している鳥たちはどうなのでしょうか?
「ここにいる鳥は、まだ幸せ」なのでしょうか?

そんな疑問が残る視察でした。たぶん次に連れて行ってもらう所も、この国の抱えた事情もあるので期待をしていませんでした。しかし、まさか今後に大きく影響するとは、、、。

(つづく)

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