以前、飼い主さんと一緒にテレビのマラソンを見ていました。
そこで気づいたことがあります。
一番目(独走)に競技場に帰ってくる選手の表情に対し、二番目以降の選手の表情はとても辛そうです。
一番目の選手も同じ距離を走っているのですから、体力的には限界を超えていると思います。しかし、一番と二番ではこんなに差があるのですね。
他にも人同士の会話でこんなことを聞いたことがあります。
「日本で一番高い山は?」
「富士山!」と勢いよく答えが出ました。しかし、「では二番目に高い山は?」と質問されると答えに詰まっていました。
一番と二番、数値で表すとそんなに大差はありませんが、イメージで考えるととても大きな差があるのですね。
一番を目指す理由が、なんとなくわかったような気がします。
そう言えば、そんなきもちで振り返ってみると、「私が一番」だと思っていませんか?
私たち鳥の「一番」は、群れの中での一番ではなくて、「飼い主さんにとっての一番」です。
一羽飼いでしたらそんな問題は起こりませんが、複数羽いるということは、自分を一番と思っている鳥ばかりが集まっているということです。
これは困りますね。なぜなら、トラブルに発展しかねないからです。
できれば飼い主さんにわかっておいてほしいことがあります。
「先住鳥優先」という考え方です。
「先住鳥優先」は、前からいる鳥さんから、何でも優先的にすることです。
鳴きたいときもあるんです。たとえば、ケージから出して遊ぶ順番、食事をあげる順番、名前を呼ぶ順番というように。
次に、視点を変えて、お世話している鳥が一羽で、複数の飼い主さん(家族)がいらっしゃる場合はどうでしょうか?
しかたがないことですが、鳥にとって、家族の中に一番大好きな飼い主さんが必ずいます。
大事なのは2番目以下の人たちです。
この人たちを攻撃したり、しかとしたりなどの差別をしてはいけません。
もし、一番目の飼い主さんが居なくなったりしたときに誰もあなたをかわいがってくれなくなってしまいますよ。
心を広く持って、家族全員をあなたのとりこにするくらいのきもちで接してくださいね。
大好きな飼い主さんに近くに来てほしいとき、あなたはどのようにしていますか?
「鳴く?」「泣く?」「啼く?」
もし、それでも飼い主さんが気づかなかったら、あるいはあなたのそばに来てくれなかったらどうしますか?
「大声で」「しつこく」「来てくれるまで」鳴く? ……
なるほど。そうですよね。
でも、それをし続けたのが私でした。
私は「大声で、来てくれるまで、しつこくしつこく、ないて」いました。
そのせいで私はペットショップをたらい回しされたのです。もちろん、他にも理由があったとは思いますが……。
ではなぜ、大好きな飼い主さんは私のそばに来てくれなかったのでしょうか?
鳴いて知らせないと飼い主さんは気づかないと思って、気づくまで、大声で、しつこく。ひたすら。鳴いたのに……?
……つまり、私はうるさかったのです。
あなたは今まで自分の声がかわいいと思っていたかもしれません。
たしかにヒナのときはピィ~ピィ~と愛らしい鳴き声で、人間の心をわしづかみしたかもしれません。
でも、大人になると、声変わりし、その声で騒ぎ出すと耳障りでうるさいそうです。
……ショックですね。
ヒナのときは、鳴いたらすぐ飼い主さんが来てくれたでしょう。
でも声変わりしたら、ヒナのときほどすぐには来てくれなくなりましたね。
もしかしたら飼い主さんが気づいていないのかもと思って、さらに大きな声で鳴きます。
そして、なかなか来てくれないと悲しくなって、「泣いて」しまったのではありませんか。
鳥たちは、泣くと長い時間、泣き続けます……。
するとそのうち、追い打ちをかけるように、黒い布をケージにかぶせたり、あるいは暗い部屋に閉じ込めたりする飼い主さんがいます。
たまに水鉄砲で撃ってきたりするとんでもない飼い主さんもいます。
いきなりまわりが暗くなるので、びっくりして泣くどころではなくなってしまいます。
でも、布をかぶせたり、閉じ込めたりして驚かせても、効果はありません。
なぜなら飼い主さんもあなたも誤解しているからです。
最近の本にはこう書かれているそうです。
「鳴いたら無視しなさい」と。
無視ですか……!?
部屋を暗くしたり、暗いところに閉じ込められたりするより、無視はもっともっとつらそうです。
それでは、鳴かなかったらどうなるのでしょうか。
実は、鳴かなければ飼い主さんが褒めてくれたり、ご褒美の好物のおやつをくれたりしてくれるのです。
そうとわかっていれば、私たちだって、ムダに鳴いたりしないのに。
誤解、勘違いが生んだ、悲しいすれ違いですね。