私は昔、デパートの屋上のペットショップにいたことがあります。
当時デパートの屋上には、子どもたちが遊べる遊戯施設や、イベント会場などが併設されていて、土日になるとたくさんの家族連れで賑わいました。
当然子どももたくさん来ます。
子どもたちはペットショップが大好きです。
私を見るとすぐ声をかけてきます。
「おはよう」、「こんにちは」、「バイバイ」などと。
このような言葉でしたらいいのですが、当時の子どもたちはオウムを見ると悪い言葉を連発していました。
私はすぐその言葉を覚え、良い言葉か悪い言葉かわからず、子どもたちを見るとおしゃべりしました。
私のおしゃべりを聞いた子どもたちは大ウケで、さらに悪い言葉を教えてくれました。
あるときやさしそうなご婦人が、私を購入しようとお迎えに来られました。
やっと私にも飼い主さんが決まると思ったとき、うれしくて子どもたちの教わった悪い言葉をおしゃべりしました。
するとこのご婦人はとても悲しそうな顔をされたのです。
子どもたちにはウケたのに、どうしてかはすぐにはわかりませんでした。
理由がわからないまま、悪い言葉を子ども以外の大人の人にも言い続けました。
ウケてくれる人もいますが、大半が不愉快な表情をされました。
ウケると思っていた言葉が、人を不愉快にしていたことに気づくまで、かなり時間がかかりました。
その間にどれだけ多くの人に、嫌な思いをさせていたのでしょうか。
結局、このご婦人は私をお迎えするのを断念しました。
思い出すだけで辛くなってしまいます。
一方で、今の施設に引き取られてきて、感心させられる鳥たちがいます。
人間の世界はいろいろ大変そうだということは理解しています。
誰でもいろんな悩みを持っています。
その悩みが大きくなったりすると、ついため息をついたりすることがあります。
そんなとき、あるオウム君はすかさず「どうしたの?」と声をかけてくれるのです。
ため息をついた人は誰が声をかけたのかと、回りを見渡しますが誰もいません。
するとまた、タイミングよく「どうしたの?」と、やさしい口調で話しかけてきました。
声をかけられた人は、それだけで一瞬のうちに悩みが吹っ飛び、心を癒されてしまうのです。
また、あるヨウム君は他の鳥以上に地震がこわいので有名です。
でも、地震中は本人もパニックですが、地震が収まると人に向かって「こわくないよ」と伝えてくれます。
さらに仕事で何か緊張する場面があるときに、その人の心の中がわかるかのようにタイミングよく「こわくないよ」と言ってくれます。
この人がヨウム君から励まされ、力を蓄えて仕事に臨んだのはいうまでもありません。
私のように結果として悪い言葉しかおしゃべりしなかった鳥と、「どうしたの?」のオウム君や、「こわくないよ」のヨウム君のように、人の心を癒してくれる言葉では天地の差があるようです。
私たちの回りでいろいろな人が、いろいろなおしゃべりをしています。
もし、おしゃべりができるのであれば、大好きな飼い主さんの心を癒す言葉を覚えていきましょうね。