いつもありがとうございます。鳥爺です。
朝5時に、前日見たハチドリが来るスポットが私たちの集合場所でした。
まだ薄暗く、私たち以外は誰もいません。たぶんこんなに早い時間から行動する人は、私たちくらいかもしれません。
でも昨夜Tさんの話を聞くと、観光客が年々増えてきたので、ケツアールはさらに奥深いジャングルに身を潜めるようになったそうです。しかも昨日ロッジの管理人さんに話を聞くと、ケツアールの目撃情報はなかったとのこと。
そう、ここに来れば確実に見られる鳥ではない、ということを私たちは覚悟しなければなりません。もちろん日本からわざわざ来たので、できれば見たい、そのためには最善を尽くしたいということで、5時集合となったわけです。
さて私たちはケツアールが見られそうなスポットを探して山道を歩きました。周りは薄暗いですが、上を見上げると空は明るくなってきました。徐々に鳥たちの鳴き声も聞こえてきます。
ケツアールの鳴き声を知っていれば、探すヒントにもなりますが、残念ながら知りません。頼りはガイドのTさんです。Tさんはケツアールの鳴き声を聞いたことがあるそうです。
誰も歩いていない静かな森の中では、小さな物音が聞こえます。私たちは全神経を耳と目に集中して、ケツアールを探しました。
Tさんが予め調べてくれたケツアール目撃スポットを数カ所を辿りましたが、今のところ空振りでした。もしかしたら昨日のように今日も誰もケツアールを見ることができないかもしれません。そんな気持ちになりかけた時でした。私たちの頭上からバサバサという物音が聞こえました。この音は鳥が羽ばたく音に似ています。
もしやということで、全員一斉に頭上を見上げました。しかし物音の先には、その姿は見つかりません。諦めた頃、物音と同時に羽ばたいて飛んでいる鳥の姿が見えました。
Tさんが「いた!」と、声を出さずにジェスチャーで教えてくれました。
そう、いたのです。ケツアールが!!
絶対に声を出さない、物音を立てない、という約束通り、そおっとケツアールが飛び移った木の近くに移動しました。
もし私たちの存在に気づいたら、すぐ飛び去ってしまいます。まずは離れたところからケツアールを確認しました。後ろ姿しか見えませんが、たしかにケツアールです。
長い尾羽と朝日で輝く光沢のある羽根。神々しいとはこういうことをいうのかもしれません。
私たちは写真を撮影しながら、少しずつ間合いを縮めていきました。正面の姿を見たいし、もっと近くで撮影もしたいので。
私のこの浅ましい欲がいけなかったのですね。ケツアールは私たちの存在に気づき、どこかに飛んでいきました。残念ながら、どこへ行ったかわかりません。
それから約1時間探し続けましたが、もう出会うことはありませんでした。その頃から観光客たちがケツアールを探しに、ぞろぞろとやってきました。すれ違うたびに、ケツアール目撃情報を交換しますが、出会ったのは私たちだけでした。朝5時から探した甲斐があったのかもしれません。ほんとうにラッキーでした。
ケツアールとの出会いは、あの一瞬だけでしたが、私にとっては一生忘れられない貴重な瞬間でした。
(Tさん撮影)
ケツアールと出会い、私たちは大満足で帰路に向かいました。
しかしその途中で、まさかこんなドラマが待っているとは思ってもいませんでした。
(つづく)